スポルティフ・オーダー製作など

 お客様よりオーダーをいただきました当店オリジナル・スポルティフの製作過程を紹介します。
 
最初にフレームサイズ、スケルトンをお客様と相談のもと決定し、使用するパイプ、ラグや直付け小物を決め、フレーム作成の指示書に書き込みます。今回はセンタープル・ブレーキ直付けなどもありますので、各部寸法など、細かい指定が必要となりますが・・・まあフレームビルダさんも、そのあたりは熟知しておりますので、ブレーキ銘柄指定程度で問題なく出来上がりますが・・
ハンガ小物はコンチネンタルカットラグ。エンド小物やラグ、ハンガ小物などは当店でも若干の在庫がございますが、お客様の持ち込みでの作成も可能な場合があります。持ち込みの場合は、ビルダさんでの加工が可能かどうか(特殊ロウを使うステン・ラグなど)もありますので都度の対応となります。
ビルダより上がったフレームは確認したあと、塗装へ出すことになります。上がったばかりのフレームはフラックスなども残ってますので汚く見えますが、メッキ・塗装前に酸洗します。

塗装は色の指定以外に、下地メッキ(全メッキ)や剣先メッキ、チェーンステイの硬質クロムメッキ、エンドの当たり面の硬質クロムメッキなども指定できるのですが・・・最近はRohs規制等の環境問題できれいなメッキが難しくなりました。

色指定はカラーサンプルがございますので、それで指定されるか、特殊色は塗装業者との打ち合わせになります。キャンディ系、パール系なども可能です。

エンドはCampagnoloのショートエンドにマッドガード用のダボを追加しています。

3点ラグはコンチネンタルカット。ランドナー/キャンピングなどのフレームでは当店フレーム特徴であるクロスドシートステーを採用することが多いですが、今回はごく普通の形式となっています。

スポルティフはセンタープル直付けが美しい!
ブレーキ台座はカンチブレーキと比較すると位置が高くなっています。

フォークにもセンタープル台座(ピボット)を追加します。
最近はカドミウムを含んだロウが使えないので難しいらしいです
パイプで組まれたフロントキャリアもオーダー品です。フレームが上がった段階で仮付けして確認します。スポルティフに似合う細身軽量のキャリアはオーダー作成しか入手方法はないと思われます。
フレーム全体図です。ダイアモンドフレームは520〜540程度のサイズが見栄えがよろしいようで。スケルトン的に、ほぼスクウェアですが、フルオーダーですから乗り手の好みで、楽なポジションで短い距離ならトップをつめるとか、平場長距離をゆったり走るなら長目にするなど自由が利きます。
塗装が上がり、組み立て中
チェーンステイ上はチェーンあふり止め用の台座を付けております。
フレームポンプはシリカのインペロ。
BB小物はSugino Super Delux。高精度で軽量なんですが鉄ですので重さはそこそこ、昔は軽合金ロックリングが標準でしたが、今はオプション・・・
シートラグ付近。ここをどう処理するかはユーザーの好みが分かれるところですか・・。ラグにメッキする、金線入れる・・・まあシンプルに仕上げた方がよろしいかと
エンドは当たり面に硬質クロムメッキをかけています。
ガード用に追加したダボもきれいにできています。
フロント周り。ヘッドバッチを付けると引き締まります。ブレーキ付けずにキャリアを仮付けしてます(段付けねじの組み付け順が完成品と異なる)。
組み上がりです。見栄えの問題で、写真ではサドルが高めですが、長い距離乗るならトップは長め、サドルは引き気味のほうが楽でしょう

クランクはルネルス、PCD70mm、いわゆるツーリング3アーム。マッドガードは本所のスポルティフ用、クラシカルなラグ付きAtaxのステム、サドルはBrooks Professional、変速機系はCampagnolo Rally、ブレーキはMafac 2000、ハブはMaillard 2000。
スポルティフの王道であるフレンチパーツ主体で組んでますが、トラブルの出やすい変速系は信頼性の高いCampagnoloでまとめ、安心して長距離を走れる仕様になってます。
変速機系の選択にSimplex Super LJ 6000の縦型は値段を含め色々ありますし、横型ロングはRallyと比べると「がっかり美人」なんですよ。見た目はいいんですけどねー

キャリアに取り付けた小ぶりのライトはSoubitez 4024(改造品、後述)、アルミボトルは東京ボトル型、マッドガード上に小ぶりのリフレクタを乗せ、エンド付近にRadios(似)のテールランプを追加しています。

Ataxのラグつきステム。ステムの長さは車体の見栄えに影響します。
ブレーキケーブルはトップチューブ内装となります。ワイヤはRotoのスプリング付きワイヤクロスでまとめています。便利グッズなんですが・・・入手困難品です
フロント周り。バーテープは使わず、一枚革の編み上げです。編み上げバーテープは手間がかかり、特に「縫い目」のそろった美しい仕上がりにするのは大変だったりします。
電池を組み込んでLEDを点灯する改造型Soubitez 4024。お客様が改造されたもので、当店では対応できません。
小ぶりのLED懐中電灯の発光部分を4024の内部にポッティングで固定し、LR42型ボタン電池3個で点灯するように改造したもの(らしい)です。
本来電球をねじ込む部分にスイッチをポッティングで固定しています。
Soubitez 4024はプジョーのミニサイクルなどに使われていたもので、本来はマッドガード上に乗せ、ダイナモで豆電球を点灯させるのですが・・・いかんせん暗い
LEDをレンズに直接向けているので、それなりの光量は確保できているようです。
クランク周り
ルネのクランク。歯は互換メーカから新品が手に入るらしく、長く使えそうです。FDはカンパの80年代のもの。革まきトークリップとサンドイッチ革ストラップはクリストフ
リアディレイラは前期型の横型Rally。マッドガード用ダボにテールを共締めで固定しています。Radios似のひさし付きテールは、こちらも電池が仕込まれLED点灯します
サドルはBrooks Professional 大銅鋲。サドルは使用者のお尻に会うかどうかなので、Idealでないとダメなどと、こだわる必要はないと思います。
ブレーキは前後初期型のMafac 2000。ヨークワイヤ(千鳥ワイヤ)両端が球状のタイコになっているタイプ。ワイヤ類は当店で入手できます。
マッドガードは本所製、ステーはVステー、松葉と呼ばれるタイプ。「かんざし」と呼ばれる部品でガードを保持します。泥除けの曲線がきれいにでるのですが、これは好みによります。
ハンガ周り
仮組みのSilucaをカンパのポンプアダプタの付いたものに変更しました。実使用ではこちらのほうが安定します。パッキン類の入手性も良いようです。
ハブは前後ともMaillard 2000。Mafac 2000とともにフランス国策ブランド「SPIDEL」を構成していた、当時のフランス最上位グレードでした・・・
フリーホイルはAtomの6段、ツーリングに段数が多いものを選ぶとガチャガチャと面倒ですので、リア6段程度がゆったり走るには適当かと思います。
フロントのブレーキ取り付け部。Mafac特有の直付け小物です。よく見えませんが、キャリア取り付けに使う段付きボルトはMafacの雰囲気を崩さないよう、締め付け部の六角が薄くなっています。
ハンドルを裏から見ると、きれいに編み上げられていることが確認できます。2本針を持って編み上げるのですが、力の加減で縫い目が乱れます。結構職人芸なんですよ。バーエンド・プラグはアルミ製(日東)
リムは現実的な選択でARAYA RC540。GrandBoiss、VelloOrangeさんなどから、見栄えのよいツーリング向けリムが出てはいますが、品質を考えるとARAYA RC540に落ち着くような気がします。Super Championなどの選択もあるのでしょうが、リム真円度の悪さは乗り手の疲れにダイレクト・アタックしてきます。
タイヤはPanaracer Tourer Plus。ケブラビードの軽量タイヤ。しなやかな良いタイヤです。
ガードとのクリアランスも「向こうが透けて見えない」ことが肝要です。
タイヤに関してGrandBoisさんのものも良いようで、消耗品ですので選択はいろいろです。
オーダーされたお客様からご報告いただきました。フロントバック、サドルバッグを装備し、ツーリングに出られたそうです。
(バッグ類も当店でご用意可能です)

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